この記事では、6月4日に発売が決定した『呪術廻戦 16巻』について、
- 16巻に繋がるあらすじ(15巻 ネタバレ)
を分かりやすく、最新刊を手に取った際に続きから楽しめるように解説します!
最新刊である『呪術廻戦 16巻』は、2021年6月4日発売決定!
表紙が衝撃的で話題になっていますが、夏油の正体が発覚した134話から恐らく”死滅回游”の総則(ルール)が掲示された143話までが収録されると思われます!
『呪術廻戦 16巻』を楽しむために、15巻からのあらすじを含めて解説します!
『呪術廻戦 16巻』に繋がるあらすじ
『呪術廻戦 16巻』の直前の話のおさらい!
『呪術廻戦 15巻』は、真人の「無為転変」を受け、顔面がはじけ飛んでしまった釘崎!「釘崎死亡」がトレンドに並んだ125話から、虎杖と東堂の共闘によって真人と決着——そこに夏油が現れた133話までが収録されていました。
各話のあらすじを復習しておきましょう♪
あらすじは読みやすさを考え、記事の書き方を少し変えています。
各話のネタバレを含みますので未読の方は気を付けてくださいね
未読の方向けの『呪術廻戦 15巻』のまとめ
- 釘崎リタイア、絶望する虎杖
- 東堂参戦、真人戦は最終局面へ!
- 真人最後の覚醒! そして決着!
『呪術廻戦 15巻』を未読の方は、こちらの方法を使えば無料で読めますよ♪
参考にしてくださいね!
『呪術廻戦』を最新刊まで無料で読む方法!オタクコレクション秘伝の裏技まとめ
125話「あの子の話」
ふみの回想:幼少期の野薔薇ちゃん
釘崎が村で暮らしていた頃の親友「ふみ」の回想で、幼少期の釘崎が語られる。
釘崎は、幼い頃からなんと言うか、釘崎だった。
ふみは小学校に上がると同時に村に引っ越してきた。ふみの通う小学校は全校生徒19人。
ふみはパステルカラーの水色のランドセルを選んだ。みんなは赤か黒のランドセル。ふみは赤も黒も好きだったが「皆は水色が嫌いだったみたい」と語る。ただ一人を除いて——
「ねぇ ふみのランドセルさぁ」「交換しよっ」
「え?」
「交換!! しよっ!!」
「… え?」
「その日の放課後にランドセルは返ってきた」と振り返るあたり、結局一度は交換を押し切られたらしい。当の釘崎本人は「そもそもランドセルきら~~い」と自分のランドセルを地面に蹴りつけていたが。
その日から、釘崎はふみの家に入り浸るようになった。よくふみの父とスマブラをしていたようだ。
釘崎は村の人達が嫌いだった。
「狭ぇ村だからさ」「友達になるより他人になる方が難しいんだよ」
ふみは良いことではないかと当時はそう思ったが、そこから数年経って「近所のお婆ちゃんが赤飯を炊いて持ってきたとき」「野薔薇ちゃんの言っていたこと その気色悪さを理解できた気がする」と語る。
初潮の祝いを持ってこられたのだろう。今も風習が残る地域もあるが、大昔は「女が初潮を迎えたら、子を産める体になった(妻に迎えてください)」と赤飯を配っていたことから、今でも初潮の祝いには赤飯を炊く家も多い。だが、家族でもない相手がそれを知るのはどうなのだろう。
沙織ちゃんとの出会いと変化
釘崎は当時から釘崎だった。
「秘密基地を見つけたの!!」
子供らしからぬ事を言ったかと思えば、「今日からそこに住むんだー」急にそんなことを口にする。
振り返っていえば、釘崎の言葉は誰かの受け売りだったのだろうとふみは思う。「例えばお母さんとか」
「ここ!!」
そうして連れてこられた場所は明らかに——「野薔薇ちゃんの言う秘密基地は」「他ん人家だった」
住んでいたのは何度か釘崎の回想にも現れた「沙織ちゃん」(アニメでは3話に登場)と言って、いつも突然訪ねてくる釘崎とふみを、嫌な顔一つせず迎え入れてくれた。
思えば、沙織はいつも家にいたなとふみは振り返る。
沙織と会って、釘崎は少しずつ変わっていった。
「ふみー 三つ編み練習させてー」「またぁ?」ふみの髪の毛で謎の三つ編みタワーを量産していたが、「口調も柔くなって」「なんというか 品のようなものが 身についていったんだと思う」
ふみの目から見る沙織は、同じ余所者だったが、何もかも違いすぎた。
それから少しして、沙織の家がおかしくなった。
「ゴミとか 落書きとか」「明らかに人為的に積まれた雪とか」「立派なおうちが不気味に見えるくらい」——言葉にはしないが、村の誰かの仕業だろう。
それから更に少し経って、沙織は引っ越した。
ふみと釘崎の二人で見送ったが、その時誰がどんなことを言ったか、どんな天気だったかは思い出すことができない。それよりも記憶に残っているのは——「とにかく野薔薇ちゃんが 顔をベチャベチャにして泣いていた」ことだった。
釘崎も泣くのだ——「その衝撃で他の事が頭に入ってこなかったんだと思う」
「今年の6月 野薔薇ちゃんが東京の高校に通うことが決まった」釘崎は祖母と揉めて、入学の時期が中途半端になったらしい。
「じゃ!! ここには二度と戻って来ねぇから!!」「ふみ!! アンタもその内この村出なさいよ!!」
上京の見送り。釘崎は笑顔だった。
「…うん」
「私の時は泣かないんだ」なんて、「最低なセリフがよぎったせいで何も言えなくなってしまった」
引っ越し以来、二人は沙織の話をしていなかった。
だけど、釘崎は言う。
「ふみ」「次会うときは 三人で!!」
釘崎は泣いていなかった。否、泣かないように歯を食いしばっていた。
それが分かってしまったから——ふみは泣いてしまったけれど。
「…うん うん!」「うん!!」
再開の約束は、確かに交わされた。
沙織ちゃんと釘崎の現在
——時間は現在に戻り。
かつて釘崎とふみに見送られた沙織は、オフィスで締め切りに追われていた。
「沙織 ちょっと休んだら?」「駄目ですよ 校了日今日…っていうかもう昨日ですよ」「朝までは今日よ」「何言ってんだか」
職場の先輩との会話、夜更かしでできてしまったニキビへの悩み——そこにあったのは普通の会社員として過ごす沙織の姿だった。
沙織は先輩に村で過ごしていた頃の思い出を話していた。一人っ子だったから、懐いてくれた釘崎がかわいくて、慕ってほしくて無理してお姉さんぶって…「今どこで何してるんだろ」そう懐かしんでいた。
そして釘崎もまた、自分の人生を振り返っていた。
暮らしていた村のことを思い「あの村の連中は全員頭がおかしい」「おかしい奴の声は大きくて」「自分以外の全てに思えて」「土足で他人の人生を踏みにじるもんなんだ」そう振り返りつつも、
呪術高専で出会った人のことを思うと「っていうわけでもなかったかなぁ」と思いなおす。
最後に、村を出るときに「次に会うときは三人で!」そう涙をこらえて再開を約束したふみのことを思い、力のない笑みで釘崎は詫びる。
「ゴメンね、ふみ」「約束守れなくて」
そして場面は現在へ。
何かを吹っ切ったような、胸を張った表情で釘崎は虎杖に伝言を頼む。
「皆に伝えて」「「悪くなかった」!!」
——直後、吹き飛ぶ釘崎の顔面。
後には呆然とする虎杖の姿だけが、残っていた。
126話「渋谷事変㊸」
在りし日の思い出、けれど…
ある日の回想。虎杖・伏黒・釘崎のコーヒータイム。
釘崎は不注意で、伊地知さんの持ってきた五条先生のシャツ(クリーニング済み)にコーヒーをこぼしてしまう。
「クリーニング済みのシャツを私たちに任せて置いていった伊地知さん コーヒーをこぼした釘崎」
と並べて「どっちが悪い?」とのたまう釘崎に
「「釘崎」」二人は即答した。
三人で協力してしみ抜きを試みるも、「うーむ」「「マリメッコ」に見えなくもないわね」「ナメんなよ アパレルを」結果は散々。
弁償のためタグからブランドを調べて——税抜¥250,000に思わず顔面崩壊する虎杖と釘崎。
「仕方ない私が9万出すわ 2人は8万ずつ…」「「え”っ」」
ナチュラルに折半を要求する釘崎に絶句する二人。そこに何も知らない五条が現れて、
「伊地知から僕のシャツ預かって…」「どうしたの恵」
異常に気付く。
「別に…」
半ギレの伏黒だが、胸元が異様に膨らんでいた。コーヒーで染色された五条のシャツは、伏黒の制服に無理やり詰め込まれていたのだった。こらえきれず吹き出す虎杖と釘崎。
在りし日の、三人の日常だった。
倒れた釘崎、心が折れてしまった虎杖
……場面は現在へ。左顔面が弾け倒れた釘崎を前に呆然とする虎杖。
脹相戦の敗北、宿儺による大量殺人、七海健人の死。
それらを経て、虎杖悠仁の心はもう戦う意志が折れていた。
「ゾクゾクする!! 自分の才能に!!」
無為転変で釘崎の顔面を吹き飛ばした真人は歓喜していた。
釘崎の死体を晒して虎杖悠仁の魂を折る——狙った通りの展開に。
「あぁ俺って…!!」「俺こそが!!」「呪いだ!!」
満面の笑みとともに虎杖を襲った拳は、黒い光を放っていた。黒閃だ。
黒閃は、微笑む相手を選ばない黒い火花だ。狙って放てる術師はいない。だが、今の真人にはかみ合っていた。
「どーせオマエは!! 害虫駆除とか!! 昔話の妖怪退治とか!! その程度の認識で渋谷に来たんだろ!?」
真人の拳が、蹴りが虎杖に突き刺さる。
「甘ぇんだよクソガキが!!」
「これはな戦争なんだよ!!」
「間違いを正す戦いじゃねえ!!」「正しさの押し付け合いさ!!」
「ペラッペラの正義のな!!」
失意で反撃もできない虎杖の、心も体も真人は嬲る。
「オマエは俺だ虎杖悠仁!!」「俺が何も考えず人を殺すように オマエも何も考えず人を助ける!!」
——その本質は同じだと突きつける。
ボロボロになり倒れる虎杖に「なあ虎杖悠仁」「殺した呪いを数えたことはあるかい?」語りかける真人。返事は要らない。「ないよな」「俺も俺も♡」「殺した人間の数とかマジでどーでもいいもん」
「オマエの事もそのうち忘れるさ」
右腕を鎌に変え、虎杖にトドメを刺す最後の一撃——は空振り。虎杖は目の前から忽然と消えていた。
窮地の虎杖、だが親友は遅れてやってくる
そこに響くは「祇園精舎の鐘の声」から始まる『平家物語』の冒頭——
「盛者必衰の理を表す ただし!!」「俺たちを除いてな」
先ほどまで真人がいた位置に——東堂 葵が虎杖を守るように立っていた。真人は新手の登場に一瞬動揺するも「顔面のキズ」「今のは位置の位置換え」「花御を追い込んだ術師か!!」と分析。
さらに京都高専の1年・新田 新が現れ東堂に駆け寄る。「あっちの子の処置は終わりました」と。
満身創痍の虎杖に東堂は声を張り上げた!
「起きろ虎杖!! 俺たちの戦いはこれからだ!!」
……その言葉のチョイスには新田が冷や汗をかいたのは言うまでもないが。「縁起悪っ…!!」
127話「渋谷事変㊹」
絶望に屈した虎杖、嘲笑う真人
現れた東堂に、虎杖の返す言葉は悲痛な叫びだった。
「俺はもう…戦えない…」「釘崎だけじゃない…ナナミンも死んだ」
大事な仲間を立て続けに失い、宿儺が殺した人の分まで「いっぱい…人を助けなきゃって」そう思いここまで戦ってきた虎杖。
「だけどできなかった!!」
「俺はただの人殺しだ!!」
「俺が信念だと思っていたものは」「俺のための言い訳だったんだよ!!」
「俺はもう 俺を許せない」
その言葉が、今の虎杖のすべてだった。
その叫びを「声が小さくて聞こえねぇよ!!」真人があざ笑い飛び掛かるが、東堂の不義遊戯によって真人は新田と位置を変えられ、いなされる。その直後、今度は虎杖と位置を変えられると東堂の真正面に立たされており——真人の左ほほに東堂渾身のミドルキックがクリーンヒット。
吹き飛ぶ真人。目まぐるしく変えられる立ち位置に「面白い」「分かっていてもここまで混乱するものなのか!!」と笑みを浮かべていた。
語る背中、呪術師たちから託されたモノ
俯く虎杖に東堂は背中で語る。
「俺たちは呪術師だ」
「あらゆる仲間 俺たち全員で」「呪術師なんだ!!」
「俺たちが生きている限り」「死んでいった仲間たちが真に敗北することはない!!」
「それでも」と、東堂は虎杖に問う。
「オマエは何を託された?」
顔を上げる虎杖に、東堂は振り向かない。
「今すぐ答えを出す必要はない」「だが…」「答えが出るまで決して足を止めるな」
真人へ駆け出す東堂に、次いで新田が虎杖に術式を施す。
「今まで君が受けた傷はこれ以上悪化しません」「治ってはいませんが出血は止まり痛みも和らぐでしょう」術式の効果と注意点を伝えた。「東堂さんの弟…あんま似てへんな」ちょっと勘違いしながら。続く言葉に虎杖の目に光が戻る。
「あっちの彼女にも同じ処置をしました」「助かる可能性は0じゃない」
「0じゃないだけですからね!!」「あんま期待せんといてくださいよ!!」そう言って離脱する新田に返す虎杖の言葉は「…うん!!」だけだったが、そこには確かに、力が戻っていた。
背負う覚悟を込めた、決意の黒閃——!
一方、東堂と真人の攻防は一進一退。
体を無為転変で変形させ襲い掛かる真人を、不義遊戯の位置変えで躱し投げようとする東堂。
しかし、真人は”背中から胴体”を生やしてカウンターを仕掛け——再度、位置が入れ替わる。
「どうした?」「俺には触ってくれないのか?」
不敵に笑う東堂に真人は「やり手だな…」「 くたばり損ないの虎杖と距離を取りながら俺をいなしている…」と評価する。だが、既に布石は打っている。「それだけじゃないんだよね」
位置換えを予想し改造人間を足元に放っていたのだ。
槍のように背後から突き上げる改造人間——それすら東堂は躱す。だが、真人は目の前だ。
「来いよ!! 位置換え!!」「対応してみせる!! 必ず当てる!!」
次こそは位置換えを攻略する——真人は思う。
「黒閃をもう一度キメたい…!!」そうすれば「もう少しでたどり着ける気がする」「俺の魂の本質へ!!」
狙うは虎杖に放った黒閃の再現!
不義遊戯で位置が変わる。目の前には——虎杖がいた。
「後は頼みます」託された言葉に、決意を目に立ち上がっていた。
「ごめんナナミン」「楽になろうとしてた」
「罪すらも 逃げる言い訳にした」
そして——放たれた黒閃。
迷いを振り切ったその拳は、真人の右腕を一撃で砕き尽くす!
弾き飛ばされる真人。「死に体が」笑う真人にダメージは薄い。右腕もすぐさま再生される。
だが、「おかえり」「応!!」
東堂に応える虎杖は、戦意を取り戻した男の顔をしていた。
128話「渋谷事変㊺」
渋谷へ向かう三輪とメカ丸の想い
——東京行の新幹線。空席だらけの車両に声が響く。
「もう決着がつく頃ダ」「今から渋谷に向かっても意味はなイ」「戻るんダ、三輪」
三輪の手にかかえられたミニメカ丸だ。
メカ丸は真人により命を奪われた。三輪を渋谷に近づけたくないのだろう。
ならばなぜ、東堂と新田は向かわせたのか。
「東堂は渋谷でも9割9分死なんと判断しタ」「東堂と同行している新田もナ」「アイツの術式は役に立ツ」「私は!!」
「私は…役立たず?」
三輪は納得できなかった。東堂の事は分かる。だが、新田は同じ一年だ。
ならば、なぜ私は——
答えるミニメカ丸は諭すように語る。
「…もうそういう次元の話じゃないんダ」「オマエだけじゃなイ」
「真依、加茂、西宮、歌姫も31日は京都以南の任務に就くように細工しておいた」
メカ丸は真人たちのスパイとして京都校から情報を流していた。だから、すべての事情を知っていた。だがその真意は、京都校の皆を守ることにあった。その果てに命を失ったとしても——
「なんで何も言ってくれなかったの?」「なんで相談してくれなかったの?」「私たちは仲間じゃないの?」言葉を重ねる三輪。
「私が弱いから?」
「違ウ、弱いのは俺ダ」「弱いからやり方を間違えタ」
そして、「弱いから間違いをつき通せなかっタ」そう語る。
告げられたなかった願いと残された者たちの決意
「大好きな人がいたんダ」「どんな世界になろうと俺が側で守ればいいと思っていタ」
「その人が守られたいのハ俺じゃなかったかもしれないのニ」
メカ丸は——いや、与 幸吉は守りたかったのだ。仲間を。
「会いに行くからね」そう言ってくれた、三輪を。そして、生身の姿で会いに行きたかった。
だがそれも、もう叶わない願いだ。
「時間ダ、三輪」
ミニメカ丸はあくまで与が生前に残した「保険」だ。時間はもう残されていなかった。
「さよなら 今まで」「さよならなんて言わないで!!」
「三輪」
ミニメカ丸は静かに語る。
「幸せになってくれ」
届いた言葉は滑らかだった。
走る新幹線の窓。誰もいないはずの三輪の隣には、与の姿が映っていた。
「どんな形であれオマエが幸せなら」
「俺の願いは叶ったも同然だ」
——後には三輪の慟哭だけが残っていた。
三輪の声が響く同車両のデッキに、京都校の面々が揃っていた。
「歌姫先生 メカ丸がした事は」「不問よ 本人が死んでるんだもの」
「随分と低く見積もられたものだな メカ丸め」
「ね 東堂君なら死なないとか 私たちなら死ぬとか関係ないっつーの」
禪院 真依・庵 歌姫・加茂 憲紀・西宮 桃の4人だ。
言葉は多くない。だが、
「カワイイ後輩を泣かした奴はブチ殺す」
そう語る西宮の言葉が彼らの気持ちを表していた。
東堂覚醒!120%の潜在能力を発揮
——場面は虎杖&東堂 vs 真人に戻る。
虎杖の見切り、東堂の位置換えによるコンビネーションを、真人は無為転変による変形で捌きながら、
「チョンマゲゴリラの魂は万全だが 今の俺ならワンタッチで殺せるか?」
「虎杖の魂は残り1割ってところだな」と冷静に判断していた。
対して、自身の魂は残り4割。分身をつぶされたこと、虎杖の黒閃とラッシュで随分と削られた。
それらは——釘崎の功績だ。
「雑魚のくせに爪痕はきっちり残しやがって」
「まずは厄介な位置換えから消す!!」
虎杖には改造人間、東堂には左腕を刃に変え渾身の一撃を繰り出すが——再度の位置換え。
真人の刃は改造人間を切り裂いていた。
「無生物との位置換え!!」「解放前の改造人間の呪力も拾えるのか!!」一瞬の驚愕。
真人の硬直に東堂は思う。——真人もすでに黒閃をキメていると聞く。今、置いていかれているのは俺自身だ。
「強くなったな虎杖 オマエはそれでいいのか東堂葵!!」
「再び虎杖を独りにする気か!? 東堂葵!!」——自身への発破は形を成す。
東堂の蹴りに、ついに黒閃が発動する。
大きく弾かれる真人。魂に影響しない東堂の攻撃は真人にダメージを与えない。
だが、これにより「三者其れ其れが120%の潜在能力を引き出す」に至る。
真人のテンションがさらに上がり、大量の改造人間を吐き出す。「多重魂」&「撥体」のコンボから放たれるのは、位置換え無意味の全方位範囲攻撃!
その威力は地下の天井を割り砕き——地上に押し出される虎杖&東堂!
「アゲてけよ虎杖!!」
「俺とオマエ!! 最後の呪い合いだ!!」
129話「渋谷事変㊻」
更にギアを上げる真人、新たな改造人間「幾魂異性体」
「アゲてけよ虎杖!!」
「俺とオマエ!! 最後の呪い合いだ!!」
渋谷の路地を「撥体」が突き破り、叫ぶ真人。その目は虎杖を捉えており、因縁の決着を望んでいる。
だが、ここには東堂もいる。
「おいおい 俺は仲間外れかい!?」
不義遊戯による位置換えが起こり、東堂は真人を掴み倒す。虎杖が迫る!
しかし、真人は自分の首を自切し、虎杖の頭部へ向けた蹴りを躱す。
残った体からはカタツムリを思わせる頭部が発生、分身となって虎杖と東堂に襲い掛かる。
カタツムリ頭部の分身が二人を押しとどめている間に、首だけになっていた真人は体を作り直し、「多重魂」を発動。
「撥体」は「多重魂」によって融合される際に発生する拒絶反応によって、質量を肥大化させる技だったが、ここにきて真人は新たな境地に達する。「拒絶反応の微弱な魂たちは交ざり合い体を成す」
——新たに生まれたのは「幾魂異性体」だった。
東堂葵 vs 幾魂異性体、その実力は……?
新たな改造人間の発生に東堂は考えを巡らせる。首と体は「単純な5:5の分裂ではないな」と。
分裂した「体」から生えたカタツムリ頭の方は東堂と虎杖の二人を足止めできた。首と体の「力の配分はおそらく8:2!!」と予想。首の方は位置を取って術式を行使した。本体は弱体化している首の方——ならば!
「そちらを虎杖に確実に潰させる!!」
「改造人間の等級は2級から2級弱と聞く!! 手早く潰せ東堂葵!!」自身に発破をかける。
不義遊戯によりそれぞれの位置を換え、東堂は幾魂異性体へと迫る——が、
「何!?」
「ははっナメてっから」
東堂の予想を裏切り、幾魂異性体の拳は衝撃的な威力を持っていた。
東堂の巨体が撥ね飛ばされ、ビルの窓に激突。そのまま天井、床にバウンドしても衝撃は殺しきれずビルのワンフロアをそのまま突き抜けてしまう。
迫る幾魂異性体。東堂は体制を立て直し、掴んだ瓦礫に呪力を込め幾魂異性体の頭上に向けて放る。
位置換えのマーカーだ。幾魂異性体の後頭部を東堂の後頭部が打ち抜いた。
「——ん成程!!」
幾魂異性体は一撃で死んでいた。東堂を通り1つ分撥ね飛ばす程のパワーがありながらだ。
どうやら「幾魂異性体」とは、交ぜ合わされた寿命を一瞬で燃やし尽くすことでパワーを得ている超攻撃型の改造人間のようだ。それが——東堂の前には「もう2体」立っていた。
「許せ 憐れな魂達よ」
どんな時でも肌身から離さないネックレスにキスを捧げ、東堂は拳を構えた。
起死回生を狙う一か八かの賭け! 天才に倣う「0.2秒の領域展開」
「チョンマゲゴリラとの分断は済んだ このまま」
「押し切る!!」
東堂を追いやり、1対1の状況を作り出すことに成功した真人。
多重魂からの撥体で改造人間の質量攻撃を虎杖に仕掛ける。改造人間を躱し虎杖は蹴りを放つが、カウンター気味に足を掴まれ、そのまま放り投げられてしまう。
投げ飛ばした虎杖を追う真人、しかし、気づく。
「チッ!!」
「どうやらとことん 俺を仲間外れにしたいらしいな」
体制を立て直した虎杖の隣には、既に余裕の表情で東堂が立っていた。
超攻撃型改造人間の幾魂異性体といえど、東堂の足止めにはならなかったようだ。
振り出しに戻った状況に真人は思考を巡らせる。
「コイツに攻撃を当てるのはかなりハードルが高い」かと言って領域を展開すれば、かつてと同様に「俺は宿儺に触れ殺される」ならばどうするか?——手本はすでに見ている。
「領域展開——自閉円頓裹」
真人の一か八かの賭け。それは、0.2秒の領域展開だった。
130話「渋谷事変㊼」
刹那の領域展開、賭けの結果は……?
「一か八か 0.2秒の領域展開!!!」
真人の領域展開「自閉円頓裹」は、領域内に入った者の魂に必中効果で触れることができる。即ち、遠隔でも「無為転変」で確殺できるまさしく即死技。しかし、かつての里桜高校での一戦においては、その効果により宿儺の逆鱗に触れてしまい、逆襲されてしまったため虎杖に対して使うことができなかった。
だからこそ、真人は賭けに出た。五条悟を模倣した刹那の領域展開に。
東堂は、九十九由基直伝——簡易領域の展開、身を守る術を選んだ。
虎杖はそれよりも速く、「無為転変」の解放前に真人を祓うべく駆け出していた。
だが——更に速く、真人は術式を発動。
それは「生得領域の具現化と術式の発動」「本来は2段階の工程を1つにまとめる 黒閃を経た覚醒状態が可能にした早業」だった。
領域の展開と同時、真人は宿儺と対面する。
「セーフってことでいいのかな、宿儺」
宿儺は何も応えない。だがかつてと異なり、己の体は砕かれていない。それが答えだった。
「アンタのことだ、虎杖との間に保険は作ってあるんだろ?」
「させねぇよ」「代わる間もなく虎杖は殺す 黙ってここで見ててくれ」
真人は領域を解いた。
間に合わなかった簡易領域、失われる東堂の左腕!
領域が解除されると同時、東堂の左腕が変形を始めてしまう。簡易領域の展開は間に合わなかったのだ。
「東堂!!」
叫ぶ虎杖を殴り飛ばし、真人が東堂に迫る。優先すべきは厄介な巧者の排除——!
東堂は即座の判断で自分の右腕で、左腕を切り落とす。直後、離された左腕が爆ぜる。間一髪だった。
「なんだよ せっかくオシャレにしてやったのに」
呪力を込め拳を振りかぶる真人は理解していた。
領域展開後は、肉体に刻まれた術式は一時的に焼き切れ使用困難となる。即ち、即座に「無為転変」は使えない。だがそれは相手も同じこと。そのことを真人は里桜高校での遁走で理解していた。
故にそれは、純粋に呪力を込めただけの一撃。ただし——黒閃だ。
真人の黒閃が、黒い火花が爆ぜる。東堂が大量の血を吐き出して吹き飛ぶ。
「…コイツ」
だが東堂は戦巧者だ。山勘で腹に全呪力を集中させてダメージを最小限に抑えていた。
しかし、「術式は回復した!!」「叩く手はもうない!!」真人は無為転変による確殺を予感する。
死に体となった東堂の首元から、肌身離さず付けていたネックレスが落ちる。
落下の衝撃でネックレスのふたが開く。それを目にし——真人が一瞬固まった。
理由は分からない。二つ以上の意味で。
ネックレスの中には虎杖と高田ちゃんの写真が納まっていた。
そして——叩く手はもうない? そこにあるではないか。真人の手が。
「しまっ——」
快音を鳴らし、不義遊戯が発動する。位置換えは当然、虎杖だ。すでに拳は振り切られており——黒閃が真人の顔面に炸裂する。
虎杖 vs 真人、最後の一騎打ち開幕!
煙が上がり焼け爛れる手のひら。触れてはならない「無為転変」に一瞬でも触れて、形が残っていることを笑う東堂。負傷は激しく、地に伏した。
「後は任せてくれ 東堂!!」「ありがとう!! …東堂!!」
感謝を胸に虎杖は駆ける。
真人は回復が大勢を立て直せていなかった。「多重魂」から幾魂異性体を再度作り出し、虎杖にぶつける。
「このタイミングで黒閃をモロに喰らうとは… 最後までふざけやがってあのゴリラ…」
怒り心頭、だが感謝もしていた。真人は、ついに掴んだのだ。「魂の本質!!」「本当の形を!!」
それは虎杖が幾魂異性体を蹴り飛ばした直後だった。
「無為転変」「「偏殺即霊体」」
真人は変異していた。これまでのツギハギだからけの姿を捨て、異形の姿へ。魂の羽化を果たしていた!
「ハッピーバースデーってやつさ 虎杖」
131話「渋谷事変㊽」
真人の剝き出しの魂の形
二度の黒閃を経て、真人は新生した。己の掴んだ魂の本当の形へと無為転変によって変形したのだ。
「でも仕上げはこれからだ」
「オマエを殺して 俺は初めてこの世に生まれ堕ちる」
そこから続くラッシュは、これまでの真人と全く異なるものだった。
手段としての変形はなく、トリッキーな手段はもう無い。尾を持つ人型の異形のままだ。
だが——
「そういうことか!!」
「こいつはもう 呪霊として 変身前とは別次元の存在になったんだ!!」
ここまでは真人の天敵として通じた拳も、蹴りも、今や通用しない。
真人は生身にもかかわらず、脹相戦の時以上に虎杖の攻撃が通らなくなっていた。
理解すると同時、虎杖は顔面を掴まれ地面に叩きつけられる。
割れる地盤、破裂する水道管。あまりにも圧倒的な膂力。
「コイツを倒すには」
「俺の最大呪力出力の黒閃を ブツけるしかない…!!」
決着は黒閃!最後の一騎打ち
黒閃を狙って出せる術師は存在しない。だが、虎杖の勝ちの目は、もうそれしかなかった。
唐突に虎杖の膝から力が抜ける。負傷によるダメージが溜まりすぎているのだ。
だが、それは真人も同じだった。肘から伸びた槍状の突起が崩れ、口から血が溢れる。
「一瞬とはいえ領域展開直後に黒閃を喰らったのがマズったな…」
ダメージを考慮する真人の前で、虎杖は己の拳で膝を打ち据える。笑う膝を強制的に立て直させる。
「お互い 元気いっぱいだな」
真人の言葉に返事はない。互いに言葉はもうない。
無言の激突が交差する。
黒い火花を散らせと、拳が舞う。
132話「渋谷事変㊾」
読み合う二人、読み切ったのは……?
「黒閃を狙って出せる術師は存在しない」
「だが、今の虎杖には」「「狙って出している」とそう思わせるだけの凄みがある!!」
だからこそ、真人は確信する。虎杖は黒閃を狙う、と。無策で挑めばと祓われる、と。
「だが俺は 既に対策を済ませている…!」
黒閃とは、「打撃との誤差0.000001秒以内に呪力が衝突した際に生じる空間の歪み」の事だ。
ならば、ならば、
「サイズ変形でミートをずらし」「「偏殺即霊体」を解いた部位を呪力で保護」
「拳に呪力を集中させている虎杖の首をカウンターで落とす」
ミートをずらされ打撃と呪力の衝突が嚙み合わなければ、黒閃は発動しない。黒閃ではない一撃を耐えきり首を落とせば仕舞だ——それが真人の、真人だけが可能な対策!
虎杖の拳が、刺さる。「偏殺即霊体」が解かれた部位に衝突する。だが、読み通り黒閃は発動しない。
「俺の勝ちだ!!」
真人は己の勝利を確信する。
だが——
「時間差で 二重の衝撃…!!」
遅れてやってきた衝撃に、カウンターのタイミングがずらされる。首を落とす刃が空を切る。
「逕庭拳」それは虎杖の悪癖から、呪力操作の拙さから生まれた技だ。「呪力操作の精度と引き換えに失った技」だった。
だが、脹相戦での再発により、虎杖悠仁は逕庭拳をモノにしていた。
読み合いは、虎杖の勝ちだ。
真人戦決着!
「呪霊よ オマエが知らんハズもあるまい」
ダメ押しに、声が響く。倒れたはずの東堂が、立っていた。
「腕なんて飾りさ 拍手とは」
東堂の術式は何度も見た。「不義遊戯」——位置を換えるものだ。
「魂の喝采!!」
快音はない。切り落とした腕の先が湿った音を上げるだけだ。
真人は振り返り腕の刃を薙いだ。これまで何度も経験した位置換えを警戒して。
だが——
「入れ換わってな——」
「残念だったな」「俺の「不義遊戯」は もう死んでいる」
位置換えは起こっていなかった。ブラフだったのだ。最後まで、親友のサポートに東堂は徹したのだ。
ならば残るのは、無防備に背中を晒した隙だらけの姿だ。
そこに——全力の黒閃が炸裂した。
大量の血反吐を吐き散らし、吹き飛ぶ真人。
魂を削り切られ、「偏殺即霊体」も維持できなくなっていた。
「ハーッ まだ… まだだ」
真人は諦めない。だが、体内にストックしていた改造人間も底をついていた。
文字通り、万策が尽きた瞬間だった。
呪いを殺す
「認めるよ真人」「俺はオマエだ」
全てが尽きた真人を前に、虎杖が立つ。
だがその目は。目の前で友を殺し、一度は魂を折ってやった男の目ではなかった。
「俺はオマエを否定したかった」「オマエの言ったことなんて知らねぇよって」
「今は違う」
それは覚悟だ。呪術師・虎杖悠仁として。
「ただオマエを殺す」
「また新しい呪いとして生まれたら ソイツも殺す」
「名前を変えても 姿を変えても 何度でも殺す」
「もう意味も理由もいらない」
「この行いに意味が生まれるのは俺が死んで何百年も経った後なのかもしれない」
「きっと俺は大きな、何かの歯車の一つにすぎないんだと思う」
「錆び付くまで呪いを殺し続ける」
「それがこの戦いの 俺の役割なんだ」
ここに、立場は入れ替わった。捕食者と被食者。呪術師と呪い。
虎杖悠仁は、「呪いを殺す者」になった。
真人は逃げた。恥も外聞もなく、地を這い、逃げだした。
虎杖悠仁から逃げ出した。
そして——
「夏油!!」
最後の敵が現れた。
「助けてあげようか 真人」
133話「渋谷事変㊿」
東堂・新田、少し前に副都心線ホームへたどり着くが……
——23:09 東京メトロ渋谷駅 B5F 副都心線ホーム
「! ……この人らは 生きてますよね?」
真人と戦う虎杖に助勢する少し前。東堂と新田は五条が封印されたその場所にたどり着いていたが、あたりは異様な光景に包まれていた。
副都心線ホームには、立ったまま気を失った人々が立ち尽くしていたのだ。
飛び散る血痕など、ここで戦いがあったことは間違いない。だが、もぬけの殻だ。敵の姿もない。
「どうやら夏油傑は既に獄門疆を持ち去ったようだな」
床に空いた穴から、東堂はそう推察した。
「そんな…!!」
「切り替えろ」「五条悟を取り戻す戦いから 味方を救い できうる限り敵戦力を削ぐ戦いへと」「今!! 目的が変わったんだ」
東堂の判断は早かった。
「急ごう 虎杖なら近くに来ているはずだ」
戦巧者・東堂の嗅覚は新たな戦いの匂いを嗅ぎ取っていた。
そこに、「兄弟おったんや 絶対一人っ子やと思ってたわ」小さな誤解を生みながら。
渋谷事変、それぞれの動き
——23:28 渋谷ストリーム前
「日下部~」
宿儺の「伏魔御廚子」による無差別攻撃により崩壊した渋谷の街を、ゴリラモードになったパンダが日下部を探して歩いていた。
「おっ 見ーっけ」
とある一角で瓦礫をのけると、日下部がいた。何かを考えていたのか。刀を抱き、憮然とした表情だった。
「パンダよ 随分と話が違ぇじゃねぇかよ」
「?」「虎杖だよ」
日下部は虎杖悠仁という人間を知らない。その初遭遇が渋谷の崩壊、大量殺人だ。
パンダが「いやあれは宿儺…」と言ったところで、「肉体の主導権は肉体の主導権は虎杖にある」「そういう話だったろ」と取り付く島もない。
「先に言っとくぞ」
日下部は言う。
「五条が消えて今後虎杖にどんな処分が下ろうと 俺が虎杖側につくことはない」
「俺は虎杖悠仁の死刑に賛成だ」
それは「宿儺の器」を生存させることに対する、呪術師としての評価だった。
——22:36(現地時間) マレーシア クアラルンプール
「すまなかったね 疲れただろう 憂憂」
ベッドに横たわり、はだけた姿の冥冥が言う。「今日はこのまま一緒のベッドで寝ようか」と。
憂憂は「はしたない」と言いつつも、敬愛する「姉様」の言葉だ。満更ではない。
「すまない 折り返しが入った」
そんな中、冥冥の携帯電話が鳴る。「夜分にすまない」というが、電話の相手先は朝のようだ。時差を考えれば北米、あるいは南米か。
「私?KL そう憂憂の術式だ」「殺されそうになったんでね」
冥冥は渋谷で「特定特級疾病呪霊「疱瘡神」」の撃破後、夏油と対峙していた。殺されそうになった、とはその時の事だろう。その顔には絆創膏が張られていた。
「日本の株と東京の不動産は全て売り払った方がいいよ 私はもう円も替えた」
「そう、今すぐにだ」
冥冥は既に日本を見限っていた。今回の一戦で日本の経済は破綻する、と。
腐っても日本は世界第3位の経済大国。その影響は他の先進国にも影響するだろう、そう電話の相手に伝えるのだった。
冥冥にとっては金が全てだ。彼女は「お金以外のしがらみは理解できない」と嘯く。ならば撤退も冥冥らしい判断だった。
「フフ… 今後ともよろしく♡」
——23:28 渋谷駅 B3F 田園都市線ホーム
「どったの兄ちゃん 具合悪い?」
それは存在しない記憶。ボールで遊ぶ血塗と虎杖が、兄を呼び心配そうに見つめている。
その記憶に涙し、脹相は目を覚ました。
「行かなければ」
確かめなければならない。この記憶の意味を。脹相は立ち上がる。
「虎杖悠仁 オマエは何者だ」
「知らなければ」
「俺は 何だ?」
虎杖を追いつめ、存在しない記憶に混乱していた「呪胎九相図」の長兄が動き出していた。
夏油の登場、真人の最期
「助けてあげようか 真人」
這いずり逃げる真人の前に現れた男。その袈裟、額に傷がある姿を見て虎杖は判断する。
コイツが五条を封印した犯人!ここにいるということは——!
「…返せ」「五条先生を 返せ!!」
夏油がここにいる。ならば、既に獄門疆の回収を終えているということだ。
体はボロボロだが、虎杖は全力で駆けだした。
「鯰が地震と結び付けられ怪異として語られたのは江戸中期」
「地中の「大鯰」が動くことで地震が起こると信じられていたんだ」
対する夏油はまるで法師の説法の如く語りながら、手元から呪霊を落とす。
それが放たれた瞬間——虎杖の足元が消失した。
底が見えない奈落の大穴が突如として口を開け、虎杖が落下する——
「なっ!?」「何が起こった……!?」
現実には、虎杖はその場で地面に叩きつけられていた。
先の大穴は、どこにもない。
「落ちたと思っただろう」
「端から見れば君が勝手に引っくり返っただけなんだがね」
先ほどの説法の続きなのだろう。虎杖が落ちたと思い込んだから、その衝撃を勝手に受けたのだ。
「呪霊操術の強みは手数の多さだ」「準1級以上の呪霊を複数使役し、術式を解明・攻略されようとまた新しい呪霊を放てばいい」「勿論その間を与えずに、畳みかけるのもいいだろう」
説法は続く。今度は夏油の足元から伸びた影が形を変え、百足のような呪霊が虎杖を拘束する。
虎杖は力づくで振りほどこうとするが——再び大穴が開く。呪霊による連携攻撃だった。
「去年の百鬼夜行 新宿と京都に戦力を分散させなければ」「勝っていたのは乙骨ではなく彼だったろう」
呪霊操術について夏油はそう語る。百鬼夜行は夏油が起こした事件だが、その語りは他人事だ。
目前には——
「君には関係ない話だったかな」
地に膝をつき、血まみれになった虎杖が目だけをギラつかせ伏していた。「…返せ!!」己の負傷など関係ない。ただ、五条を返せと叫ぶ。
「我ながら流石と言うべきか 宿儺の器タフだね」
夏油は笑う。そして——背後から機会をうかがっていた真人の奇襲をヒラリと躱した。
真人を見下す夏油の目は、仲間に向けるものではなかった。真人が夏油に返す視線もまた、同じだ。
真人は分かっていたのだ。
夏油が現れたのは自分を助けに来たのではない。
「知ってたさ、だって俺は人間から生まれたんだから」
夏油は己を、呪霊として取り込みに来たのだと。そのタイミングを計っていたのだと——
夏油の呪霊操術に真人が飲み込まる。重苦しい引きずるような音を立てて黒い珠と化す。
全て計画通りだと言うかのように。夏油は何事もなかったように語り続ける。
「続けようか これからの世界の話を」
長かった「渋谷事変 真人戦」も決着し、ついに黒幕夏油が虎杖たちの前に姿を現した!
これまで行動を共にしていた真人をも取り込んで、夏油は何を企むのか!語られる真の目的とは——!
……というところで15巻は終わっていました!
『呪術廻戦 15巻』のまとめ
- 釘崎リタイア、絶望する虎杖
- 東堂参戦、真人戦は最終局面へ!
- 真人最後の覚醒! そして決着!
『呪術廻戦 16巻』は2021年6月4日発売です!
新刊を最大限楽しむためにも、しっかり復習しておきましょうね!
\ちなみに/
かつてあった「漫画村」のような、危険な違法アップロードサイトを利用せずとも、『呪術廻戦』を完全無料で読むことができる方法(裏技)があるって知ってましたか?
知らない方はぜひ、「合わせて読みたい」の記事を確認してくださいね!
『呪術廻戦』を最新刊まで無料で読む方法!オタクコレクション秘伝の裏技まとめ
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